「響さん…いってらっしゃい」

私も微笑んで返せば
響さんは何だか寂しそうな顔をしていて
私の頬に当てた手を中々離さずにいると


「あの…若、そろそろ…」


辻川さんがどこか恥ずかしそうにしながらも
本当に時間が迫っているのか
少し落ち着かない様子で時計を見ていた。


「啓、お前は本当に邪魔ばかりするな」


響さんは機嫌悪く辻川さんにそう言いながらも
私の頬から手を離し、立ち上がった。


「月様とのお時間を
邪魔するつもりはありませんが
仕事は待ってはくれませんので…」


「ルナの名前を呼ぶな」


「お名前で呼ぶしかないではありませんか…。
月様、お邪魔して本当に申し訳ありません」


すると辻川さんは私の方に視線を向けて
謝ってきたため


「いえいえ…!
響さんは私の体調を心配して下さって
私が引き止めてしまったようなものなので
こちらこそ本当に申し訳ありません」


私が慌てて謝れば
辻川さんはそんな私に
爽やかな笑顔で微笑みながら


「月様は本当にお優しい方ですね」 


そう言ってくれた。