ひえぇぇっ。全力お怒りモードだ。

 むちゃくちゃ怒ってる……。


 こうなったら……、こうなったら仕方がないよね?

 このままじゃ確実に殴られちゃうし。

 究極奥義を使うしかない。



 「やだあああぁっ!! 誰か助けて! 犯されるっ!!」


 一か八か。いかにも被害者に見えるように大声で叫んでみた。


 顔を両手で覆って肩を震わせて、他の人から見たら本当にそう見えるはず。

 これなら誰かが助けてくれるかも知れない。


 「……は?」


 突拍子もない私の叫びが利いたのか胸ぐらを掴んでいたショウの力が弱まる。

 恐る恐る指の隙間からショウの顔を覗いて見たら凄くビックリした顔をしていた。

 予想外の反応を返されて頭の中が真っ白な感じ。



 「おい。君! 何をしているんだ」

 「はっ、俺?」

 「そうだ!その子から離れなさい!!」



 突然、背後から飛んできた怒鳴り声にショウがビクッと体を震わせる。


 私の企みは見事に叶ったらしい。

 近所の民家からヒーローが飛び出してきた。


 推定60代くらいの白髪混じりの渋いオジ様。

 状況が状況なだけにヒーローすら飛び越えて白馬に乗った王子様みたいにキラキラと輝いて見える。