「んだよ。脅かすなよ。イチャこいってんのかと思って本気で焦ったし」
呆然と私たちを見ていたショウは、はっと小さく鼻で笑うと開けっ放しだった部屋のドアを静かに閉めた。
そのまま髪の毛を指でサラサラと弄りながら、ダルそうに壁に凭れて私を見つめてくる。
「ショウ……」
「で、覚悟は出来てるんだろうな?カンナ」
「え?」
「え?じゃねーよ。お前の所為で俺はあの後、交番に連行されるわ、オカンが呼び出されるわ、散々な目にあったんだからな」
油断していた私を睨みつけ、ショウは鬼の進化系みたいな怖い形相で指の関節を鳴らした。
そのまま、じりじりとベッドまで近づいてくる。
うわぁ……。ボコボコにされるかも知れない。
思わず顔が引き攣って近づいてくるショウから逃げるように慌ててナオの背中と壁の間に隠れた。
「ん?交番ってどういうこと?」
ナオが振り返って不思議そうに首を傾げてくる。
“そうだ。ここはもうナオに助けてもらうしかない”
そう思った私はナオの両手に自分の手を重ねてギュッと握り締めた。