釈然としなくて笑い続けるナオの顔を至近距離でじっと見つめる。

 前髪を軽くヘアピンで止めてオデコを全開にしてるナオ。肌なんかスベスベで綺麗だし。黙っていたら美男子なのに。


 「ね、ちょっと黙ってみて?」

 「嫌だ」

 「ちょっとだけ。ね?」

 「カンナの言う通りにして俺に得することが何かある?」


 必死にお願いをしてるのに、ナオは適当に私をあしらい真っ直ぐ見つめてくる。


 もうっ。本当にひねくれ屋さんなんだから。


 「あっそうっ。じゃあ、いいよ。黙ってくれないならチューしちゃうもんっ」

 「いや、黙るから勘弁して」


 冗談で言ったのにナオは本気で嫌そうに顔を引き攣らせた。そ、そこまで嫌がらなくてもいいのに。ちょっとショック。


 「冗談だよ……」

 「分かってるけど。カンナが言うと本気に聞こえるんだよね」

 「どうしてよっ」

 「だって、ほら、親父にキスしたって前科もあるし」

 「それは……」


 ナオから引き気味に言われて言葉を詰まらせる。確かにナオの言う通り。私はナオのパパである裕也オジさんにキスをした。


 でも、それは……。


 「赤ちゃんの頃の話でしょ!私は全く覚えてないもん」


 写真に写っていたのを見ただけなのに。ナオったらしつこい。ママがナオに『カンナちゃんがね~』なんて教えるからだ……。