「しょうがないなー」


 静まり返る部屋の中。ナオは私の予想とは反対に優しさが滲み出るような柔らかな笑みを浮かべた。


 おまけに枕にしていた自分の腕を解いて私に向かって両手を広げてくる。


 「ほら、おいでよ」


 呆然としていた私に聞こえてきたのは自分の耳を疑うような言葉。


 「へっ?今、なんて言ったの?」

 「おいで」


 やっぱり聞き間違いじゃない。えぇっ!?これって抱き締めてあげるってこと?こんなドキドキな展開なんて初めてなんだけど……。


 「来ないの?」

 「行くっ!!」



 こんなチャンス二度とないかも知れないし……。迷ってる暇はない。やったー!と、もうあれこれ浮かんだ疑問を全部投げ捨ててナオの胸の中に飛び込んだ。


 一歩、大人に近づいた気分だよ。あ、もしかしてこれって乙女マジックパワーのおかげ?やだっ。凄いっ!


 「なるほど。本当に来るんだ?参考になった」

 「はい?」


 聞き捨てならない発言が聞こえ、ナオの胸に埋めていた顔を上げて首を傾げる。今、微妙なニュアンスの言葉が聞こえたような……。