「ご、ごめん」

 「うん」

 「……怒ってる?」

 「怒った」


 しつこく声を掛ける私に呆れ果てたのか……。ナオは小さく溜め息を吐くと、読んでいた漫画を閉じてベッドの脇にポイッと投げ捨てた。


 読む気を無くしたっぽい。


 「邪魔だった?」

 「かなり邪魔だった」


 眉を顰めながらそう言って、ナオベッドに寝転がると鬱陶しそうに私を見つめてきた。強い眼差しにギクッと体が強張る。


 やばい……。このままじゃ怒って帰っちゃう。ナオが家に泊まったとき限定の“お楽しみ”があるのに。


 「……ごめんね?」


 焦りに焦り、慌ててナオの服を掴んで涙目で謝ってみる。“男の子は涙に弱い”乙女マジック、パート2。ふふっ。


 これでナオもコロッと機嫌が良くなるはず!っとニコニコ笑いながらナオの返事を待つ。


 でも、ナオは何の反応も私に返すことはなく、口を結んだまま奥二重の目を細めて私を見つめてきた。


 うっ。嘘泣きってバレちゃったかな?


 「ナオ……?」


 恐る恐る名前を呼んでみる。もしかして詐欺とか言うつもりだったりして……?心配になってきた。