「おい。ナオ、何色だった?」
 「教えてあげてもいいけど、500円ね」
 「げっ!金とんの?」
 「当たり前でしょ」
 「ないわー。カンちゃんのパンツに500円は高すぎっしょ。10円ぐらいが妥当だろ」

 「それもそうかも」


 ケラケラ笑い合う2人。本当に意地悪だ。

 ショウもアヤトもナオも小学生くらいから暇さえあれば私を苛めてくる。

 よくある“好きな女の子だから苛める”とかじゃない。真剣に私を苛めて楽しんでる。

 昔から何かにつけて意地悪なことばっかり言ってくるもん。

 それにショウには彼女がいるし、アヤトにも彼女が2〜3人いる。
 ナオは年上好きだし、ケイは年下好きで……。


 「そう言えばケイは?」

 家を出る前までは居たのに姿がどこにも見当たらない。
 まぁ、ケイが居たら余計に意地悪が加速しちゃうだけだし、今は居なくて良かったけど。

 ケイは私の幼なじみで1歳年下の中学生。
 野球部でピッチャーをしている。あだ名はサウスポー。


 「ケイはカンちゃんが遅いから野球の練習に行っちゃったよ」


 アヤトがケーキの箱からモンブランを取り出して私に答えてきた。ナオもお皿とフォークを取ってブルーベリータルトを食べ始めてる。


 「そっか。ケイに悪いことしちゃったなぁ……」


 野球の練習があるのを知っていたら、もっと早く帰ってきたのに。
 そりゃ、わざと遅くなったわけじゃないけど……。