「ただいまー」

 家に帰ってきた私は玄関で靴を脱いで、そのままリビングに直行した。

 何だか疲れちゃった。だいぶ暴れたけど……ケーキ、大丈夫かな?

 少し不安に感じながらもリビングのドアを開けると……。出掛けたときと何も変わらず、テレビの前で幼なじみの成宮アヤトとイトコの新城ナオがゲームをしていた。

 アヤトは同い年、ナオは私より1歳年上。一言で言えばチャラ男と変人。
 そして、この2人も私と同じ学校だったりする。


 「アヤト。ナオ」
 「やっとかよ。カンちゃん遅すぎだから。待ちくたびれたし」


 足をだらんと前に投げ出し、ゲームのコントローラーを投げ捨てて呆れた声を出すアヤト。ワックスで固めた明るめの茶色い髪を指先で軽く弄りながら私を見つめてくる。


 「カンナ……お腹空いた」

 ナオはゲームのデータをセーブしながら私の顔を覗き込んできた。黒くてサラサラの髪を揺らして、机をトントンと軽く叩いてケーキを催促してくる。


 「ごめん。食べよっか」
 「うん」
 「私、フォークとお皿を取ってくるね?」
 「ありがとう」
 「カンちゃんは何ケーキにした?」
 「私はチーズケーキだよ」


 アヤトの問いにサラッと応え、ケーキの箱をテーブルに置き、すぐにキッチンに向かう。食器棚を開けて人数分のフォークとお皿を取り出す。

 「あれ?ショウは?」

 そしたらナオがリビングから不思議そうな声で私に尋ねてきた。


 「わわわっ」

 驚きすぎてお皿とフォークが手から滑り落としそうになる。

 一瞬『あ、ショウ』に聞こえてビックリしちゃった。心臓に悪いよ。