はぁ、今日も運命の人なんて現れなかったなぁ。
 まあ、二年生になってもうすぐ二学期も終わる頃だし、新しい出会いなんてそうそうあるわけないんだから、仕方ないよね。
 来年のクラスに期待かな。
 「ただいまー」
 こんな暗い気持ちで話しかけたらつぼみに悪影響与えちゃうよね。
 やめやめ。
 手洗いうがいと共に暗い気持ちも洗い流そう。
 そして、ベランダに向かう。
 「え、あれ」
 ベランダの外に目を向けると、はっと息を飲んだ。 
 「き、きれい…」
 それに吸い込まれるように、私はベランダに出た。
 真っ暗闇の中に、淡く輝きを放つ生命が一つ。
 あのつぼみは、見事なお花を咲かせていた。
 燃えるような赤、透き通る青、輝く黄色、宝石みたいな緑、可愛らしいピンク…見る角度を変えるたびに色んな色が見え隠れした。
 まるで、ダイヤモンドのようなお花。
 本当に美しい…。
 無意識に手を伸ばして、散ってしまわないようにそっと花びらに触れてみる。
 すると、きらきらと輝く粉が落ちてきた。
 花粉かな。
 星屑みたいに一粒一粒が優しい光を帯びている。
 「はぁ。ほんとにきれい…」
 しばらく眺めていたら、くしゃみが出た。
 いつの間にか体は冷えきっていた。
 風邪ひかないように、部屋の中に戻った。