「ねぇ、あの人誰か知ってる？」
　教室に着くとすぐに、二人に聞いた。
　二人はかなりびっくりした顔をして、お互いに顔を見合わせた。
　「え、知ってるも何も、彼結構有名だよ」
　当然知ってるって様子で優乃が言った。
　「てか逆に、まりんは知らないわけ？」
　信じられない、と凉香が加えた。
　「うん。だってあの人、同じクラスになったことないし」
　「はぁー、これだからまりんは。もっと自分から情報集めてかないと」
　やれやれって腰に手を当てながら凉香は続けた。
　「彼は、神城たくまくん、だよ。理系だから私達とはあんまり関わりないけど」
　優乃が教えてくれた。
　「あんなにイケメンだし、女の子にモテまくってるから私でも知ってるってわけ。彼と同じクラスの子達はたくま様って呼んでるらしいよ」
　どこから仕入れたのか分からない情報まで付け加えて凉香は言った。
　「へええ、そうなんだ…」
　うちの学校にあんなイケメンが居たなんて驚きだなぁ。
　こんな感じで運命の人もひょっこり現れてくれないかな。
　そんなことを思いながらぼーっと一日を過ごしたけど、結局運命の人らしき人には出会うことはなかった。