今日も寒いなぁ。
 思わず身震いする。
 冬の学校なんて来るもんじゃないよ、まったく。
 電車を降りた後、学校の最寄り駅で合流した凉香と優乃とおしゃべりしながら学校へ向かう。
 今日はいつもより一本早い電車に乗れたからか、いつもと同じ通学路だけど少しだけ雰囲気が違うみたい。
 寒すぎて皮膚を突き刺すような外の空気を乗り越えて、やっとの思いで学校までたどり着いた。
 私達は下駄箱で上履きに履き替えた。
 教室はまだ暖房がついてるからまだしも…
 「廊下寒すぎん?」
 「それな。早く教室まで行こー」
 「そーだね。行こ行こー」
 私は無意識に手をカーディガンで隠して冷えを最小限にする。
 私達の制服は、襟にラインが三本入った紺色のセーラー服。
 私はその上から赤いシャギーニットのカーディガンを羽織っている。
 凉香は緑のアーガイル柄ので優乃は白で大きい網目のニットのカーディガン。
 みんな個性が出るから、冬の制服はちょっとだけ好き。
 それは女の子だけじゃなくて、男の子も。
 ニットベストを着てる人もかっこいいんだけど、一番好きなのは学ランの中にグレーのパーカーを着てる…
 「え、あの人…」
 どタイプの格好をした人発見しちゃった。
 とてつもないオーラを放つその人は、スクールバックを持った右手を肩に乗せ、ゆっくりとした足取りで私の目の前を歩いている。
 顔に視線を向けると、これまたどタイプの顔のイケメンだった。
 きりっとした目と眉毛に整った鼻筋。
 運動部なのか程よく焼けた肌に、鞄を持つ手はごつごつ角ばっていて男の子らしさを感じる。
 あんまりにもじろじろ観察しすぎて、その人とばちっと目が合った。
 「何見てんだよ」
 鼓膜を揺らす低い声に、はっとして目を逸らした。
 声までタイプかも…。
 「ご、ごめんなさい」
 でも、めっちゃガン飛ばしてきてて迫力にやられそう。こ、怖い。
 私は二人を置いてすたすたと急ぎ足で教室に向かった。