空には雲一つなく、真っ青な青空が広がっている。
 家の外では蝉がじりじりと合唱していて、暑さをより強調していく。
 そんな中私達家族は、エアコンの効いた涼しい部屋でのんびり過ごしていた。
 「まりん、お誕生日おめでとう」
 お母さんは、とびきりの笑顔で言った。
 机の上には、ケーキを食べ終わったお皿が三つ並んでいる。
 「ありがとう」
 私もとびきりの笑顔で応える。
 「今日でまりんは十七歳になったでしょ。だからね、特別なプレゼントをあげるわ」
 るんるんとした足取りで、お母さんはプレゼントを取りに行った。
 もらう側だけじゃなくてあげる側まで心躍るってどんなものなんだろ。
 ちょっと期待しちゃうな。
 「はい、どうぞ」
 戻ってきたお母さんは満面の笑みで差し出した。
 「えー、今年は何かなー」
 思っていたよりもずっしりと重いな。
 私もうきうきしながら、包みを開ける。
 「えー!可愛い!ありがとう!」
 そう、それは薄いピンク色の植木鉢だった。
 「でも、なんで植木鉢なの。しかもなんでそんなにお母さんは嬉しそうなの」
 お花は好きだし、嬉しいのは本音だけど、なんでって純粋に疑問が浮かぶ。
 お母さんは植木鉢の中に入っている袋を指差して言った。
 「それはね、この種に秘密があるの。まりんにはね、この種を植木鉢に植えて大切に育ててほしいの。とっても美しい花が咲くから、楽しみにしててね」
 「なるほどね、ただお花をくれるだけじゃなくて、育てる過程の楽しみもくれたってことかぁ」
 それに、どんなお花が咲くか分からないってところも楽しみだなぁ。
 自分でお花を育てるなんて、小学生の頃学校でもらった朝顔以来だから、枯らさないように頑張ろっと。
 「そうね。それにお花が咲く時に、良いことがあるかもしれないわよ」
 「ふうん」
 意味ありげな言い方に私は首をかしげた。
 「まりんももうそんな年になったんだなぁ」
 ソファーに座っているお父さんはしみじみと言って嬉しそうに私を見た。
 「そうねぇ。楽しみね」
 お母さんとお父さんは目を合わせて笑い合った。
 「そうだ、一つ伝え忘れてたわ。お花はね、言葉がわかるの。だから、たくさんプラスな言葉をかけて育ててあげてね。そうすれば、よりきれいなお花が咲くから」
 「へぇ、知らなかった。やってみるね」
 よし、絶対きれいなお花を咲かせよう。
 この日私はそう決意した。