案の定、森を抜けて私の視界に突然飛び込んできたその人は全身傷だらけだった。

 何度木の根に転び、行く手を遮る木の枝や茨に引っ掛かったのだろう。

 人形みたいに整った顔にいくつも傷が走り、赤い筋ができている。

 身に纏う上等そうな服も何か所か破れ、血が滲んでいた。

 ――ルカ……?
 息を切らして私の前に立つ人物を見上げて、呆然としてしまう。

 ルカと出会ったのは一年前、凍えるほど寒い冬の日のことだ。

 たった一人で魔物の群れに突撃したらしく、ルカは放射状に散らばる魔物の死体の中心にいた。

 雪が降る渓谷で致命傷を負い、命を終えようとしていた彼を私は抱き上げ、必死で助けた。

 怪我のせいで捨て鉢になったのか、治さなくていい、死んでも構わないと投げやりに言った彼に頭突きし、そんな寝言は寝てても言うなと白い息を吐きながら熱く説教したのは良い思い出だ――いや、これ、良い思い出かな?

 怪我を治した後とはいえ、ついさっきまで死にかけてた人に頭突きなんて絶対やっちゃダメです、はい。

 とにかく、一年前、たった一度会っただけの騎士はわざわざ私のために駆けつけてくれたらしい。