表向きは『公爵家の赤薔薇』と讃えられるローザ・ブレア様が癒したことになっていますが、本当は私が皇太子様を癒しました。

 二年間、死に物狂いで癒しの奇跡を使いまくったおかげなのか、私のほうが序列第二位の巫女ローザ様よりも神力が強かったようなのです。

 ローザ様は「手柄を横取りする形になってしまってごめんなさい」と真摯に謝罪してくださいました。
 
 まさしく天使と呼ぶに相応しい超絶美少女に頭を下げられて、許さない人間などいるわけがありません。

 決して口外しないと約束した私に恩義を感じてくださったらしく、その日からローザ様は私を気にかけてくださるようになりました。

 ローザ様の部屋に招かれ、二人で談笑しながらお茶を飲むこともありましたし、時にはローザ様の代わりに私が負傷者の怪我を癒すこともありました。

 ローザ様が注意してくださったおかげで周りの人間から理不尽に虐められることもなくなり、私はとても幸せだったのです。

 それから三ヶ月後、皇太子様とのご婚約が決まったローザ様が神殿を出てお城へ行く前日のことでした。