小学校の夏休みの中間に差し掛かった日。

 夜ご飯を食べた後、私がキッチンで食器のあと片付けをしている時だった。住んでいるアパートは、対面キッチン。ソファに座りながらテレビで動画サイトを見ていた小学一年生の娘、碧(あおい)と目が合う。

「お母さん、私キャンプ行きたい……」

 碧は真剣な眼差しで私を見る。

 ふとテレビを見ると、キャンプをしているお兄さんたちの動画が。

――碧がこんな真剣な表情でお願いごとをしてくるのは珍しい。

 うちは母子家庭で、私の母に碧と一緒にいてほしいとお願いすることもたまにあるけれど、基本私ひとりで碧を育てている。最近は「ちょっと待ってて」とか頻繁に言ってしまったりして、私が忙しい素振りを見せてしまっているからか、あまりお願いごとをしてこなかった。そのことに関してはいつも後から反省する日々で――。

 きっと、本当にキャンプに行きたいのだろうな。

「キャンプ?」
「うん、同じクラスのみおちゃんも夏休みにキャンプに行くって言ってた。茜ちゃんも……」

 碧が学校でお友達からキャンプの話を聞いた時、きっとお友達のことが羨ましかっただろうな。碧にはできるだけ、やりたいことをやらせてあげたい。

 キャンプなんて、したことがなくてふたりで行くのは不安もあるけれど。でも願いを叶えてあげたい。今日は月曜日。行くなら私の仕事が休みな今週の土日かな? スキマ時間にネットで安心快適なキャンプ場がないかを調べてみた。

 できるだけ近くがいいかな?と考えながらネットを調べていると『管理体制がしっかりしていて、売店も温泉もすぐ近くにあるので安心です』という言葉が書いてあり、写真に写っている風景もとても綺麗なキャンプ場を見つけた。車で一時間以内で行ける場所にあった。場所を見つけた時間は真夜中で、今、碧は私の横で眠っている。愛おしい寝顔を見ながら、キャンプに一緒に行ったら喜んでくれるかな?と、想像しながら私も眠る。