「神様にも寿命があるけん、もうあたしは手遅れったい」
悲しげに笑う彼女を、アキを、僕は、忘れたくなくって。
「あいしとうよ、アキ」
「そうやね、やったらあたしもあいしとうよ」
最初で、最後の、愛の告白だった。



こんなことなら、祖母の予言通り、連れて行って欲しかったな。
俺の攫った神隠しの犯人は、アキであって欲しい。




「なあ、アキ。僕は今でん、アキんこと、忘れられん。愛しとー。やけんしゃ、連れ去ってくれんか。」




からん、ころん。

真っ二つに割れた狐の面が、音を鳴らした。






アキの、夕暮れ色ん髪が、視界ん隅で踊っとーと見えた、気がする。