アリアはイベリスのフォークに乗せられた食べ物にパクッと食いついた。そしてもぐもぐと咀嚼すると、一思いに飲み込んだ。そして、すぐにその場に倒れ込む。そんなアリアを見てイベリスは悲鳴をあげた。

「アリア!アリア!どうしたんだ!」

(よし、演技だと気づかれていないわね、このまま気絶したふりをしなきゃ)

 イベリスの叫びを聞きつけてモルガとサイシアが慌てて駆けつけた。二人とも国の中でもトップクラスの逸材で忙しいはずなのに、イベリスの元へはどんな時でもすぐに駆けつけてくるのだ。

「イベリス様!どうなさいました!」
「モルガ!サイシア!アリアが大変なんだ!僕の昼食を食べて急に、急に倒れて……」

 ハラハラと涙を流してイベリスは訴える。その様子にモルガとサイシアは目を合わせ、モルガはアリアを抱えて治癒魔法を唱えた。

 アリアの体が緑色の光に包まれ、アリアはうっすらと瞳を開ける。

「アリア!大丈夫?」

 涙を流してアリアを抱きしめるイベリスの姿に、アリアは後ろめたい気持ちでいっぱいになる。アリアはそもそも倒れていたふりをしただけなのだ。

「この食事を念のため検査に回せ」

 サイシアが厳しい顔で近くの侍女に告げると、アリアはほっと胸を撫で下ろした。

(良かった、うまく行ったわ。これで毒が見つかってあのコックは調べられる。コックの後ろにいる黒幕にもきっと辿り着けるはずだわ)

 アリアは体を起こしてイベリスの手を優しく舐める。そうするとイベリスは安心したようにまたアリアを抱きしめた。

「しかし妙ですね、聖獣が人間の食事を食べて倒れるなどあり得ないはずなのに……」
「そういえばアリア、いつもは興味を示さないのに今日は僕が食べるのをしきりに邪魔してきたんだ。何なら後ろ足で床ドンして怒ってるようにも見えたよ」

  イベリスの話を聞いてモルガとサイシアは真剣に何かを考え始めたが、突然サイシアは何かに気付いたように部屋を飛び出していった。