「さて、目が覚めたようですのでイベリス様、話の続きをしましょう。先ほども申し上げました通り、その生き物は聖獣です。聖獣は古くからの言い伝えでこの国コランダでは神の使いと言われており、強い魔力を持っています。その聖獣と心を通いあわせることができれば災いを遠ざけ強力な護りを施してくれると言われています」

 モルガと呼ばれていた若草色のローブを羽織った男が話し始める。

(え、私ってそんな生き物なの?っていうか魔力って何?しかもコランダ国って言わなかった?聞いたこともないのだけれど……もしかして、前に生きていた世界とは別の世界なのかしら……)

 メリアは疑問に思いながらモルガの話を聞く。

「イベリス様がこの聖獣と心を通い合わせることができれば、きっとイベリス様の強力な力となるでしょう。現に、すでにイベリス様とこの聖獣の友好度が上がっているようです、聖獣の魔力に変化が見られます」

 興味深いものを見るようにモルガはメリアをしげしげと眺める。そんなモルガの様子に、メリアはまたイベリスの手に縋り寄った。

「モルガ、あんまりこの子を怖がらせないでよ。聖獣なのかもしれないけど小さくて可愛い生き物でもあるんだから。聖獣とか関係なく、僕はこの子と仲良くなりたい。ねぇ、君は僕と仲良くなってくれる?」

(はぁぁぁん!可愛い!可愛すぎるでしょ!仲良くなりたいに決まってますとも!)

 優しくイベリスに聞かれ、メリアのハートはすっかりうち抜かれてしまった。返事をするようにまたメリアはイベリスの手に擦り寄る。先ほどとは違う、親愛を込めた擦り寄り方だ。そしてイベリアの指をぺろぺろと舐め始めた。

「わぁ、見て!ちゃんと返事をしてくれたよ。可愛いね!この子はこの城で僕が責任を持って育てるよ。名前は……そうだな、アリアネル、通称アリアだ!」

(アリアネル、アリア、なんて素敵な響き……!メリアにもちょっと似てるけど、この体で新しい名前をもらえたんだもの、アリアとして立派に生きてみせるわ!)