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 暖かい手に優しく優しく撫でられている。頭を撫でたり、体を撫でたりしているがその手つきは控えめに、でも慈しむような手つきだ。

(あぁ、すごく気持ちいい……ずっとこうして撫でられていたいわ)

 ぼんやりとした頭でうっすらと目を開けると、両膝が見える。どうやら、先ほどの少年の膝の上で少年に撫でられていたようだ。

「あ、目が覚めた?おはよう。急に倒れちゃったからびっくりしたよ。大丈夫?」

 少年はメリアの顔を覗き込みながら優しく微笑み、心配そうな顔で聞いてきた。

(あ、あ、あ、なんて、なんて美しいお顔……!)

 メリアは思わず見惚れてしまう。そんなメリアの様子に、少年は問題ないと受け取ったのだろう、嬉しそうに微笑んだ。

「大丈夫みたいだね、よかった」

 少年の膝の上でメリアは辺りをゆっくりと見渡した。どこかの部屋だろうか。高貴な方が過ごすような部屋で驚いてしまう。
 少年のむかえには先ほどの若草色のローブを羽織った男と、もう一人別な男がいた。その男はどうやら騎士のようで、腰に剣を下げている。年は若草色のローブを羽織った男と同じくらいで艶のある黒髪にルビーのような瞳、スラリと引き締まった体で背も高い。

(どうしてみんなこんなに美しい人ばかりなのかしら?こんなに美しい人たちがいたのなら王都でもっと噂になったり騒ぎになったりしてもいいはずなのに)

 ぼんやりとその騎士のような男の顔を見つめると、その男と目が合う。だがその男の目つきは鋭く、無表情でむしろ怖い。

(美しい顔なのに、な、なんか怖い)

 少し怯えて思わず少年の手に擦り寄ると、少年は騎士のような男を見て笑った。

「ほらサイシア、そんな真顔ではダメだよ。この子が怖がっている」
「申し訳ありません、生まれつきこの顔なので」

 サイシアと呼ばれたその男は表情を変えず静かにお辞儀をした。