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「アリア」

 イーリスの事件が無事終わり、アリアが相変わらず気ままに獣の姿で城の周辺を探索していると、どこで見つかったのだろうかサイシアに声をかけられた。アリアは鼻をひくひくさせ、サイシアの足元に擦り寄る。そんなアリアの姿を見てほぼ真顔に近いがサイシアはほんの少し微笑んだ。

「アリア、君と話がしたい、俺の部屋に一緒に来てくれるか?」

 それを聞いて、それなら部屋まで運べと言わんばかりにサイシアの足にアリアは両手を乗せて催促する。そんなアリアをサイシアは嬉しそうに抱き上げ、自分の部屋まで連れて行った。


「で?話って?」

 部屋についてすぐ人の姿になったアリアに聞かれ、サイシアは少し考え込むように手を口元に添える。その表情は真剣そのもので、一体何があったのだろうかとアリアは不思議に思った。

「イベリスに何かあったの?また誰かに狙われているとか?」

 そんなことはないと思いたいが、イベリスはれっきとした第三王子だ。どこの不埒ものに命を狙われてもおかしくはない地位にいる。

「いや、……そうじゃない。イベリス様のことではなくて、その、俺自身のことについてなんだ」

 静かにそう言うサイシアをアリアはもっと不思議な顔で眺めていた。