「アリア、一体何があったか聞かせてくれる?僕、君のことが心配だよ」

 イベリスの言葉にアリアは体を金色に光らせ、人の姿になった。そのアリアの首から鎖骨付近にかけて大きな大きな赤い痣ができている。

「アリア!」
「すごく強い力で何度も何度もつねられたの。とっても痛かったから離してって強く思ったら火花が出ちゃった」
「火花程度で済んでリル様は幸運でしたね」

 モルガが皮肉混じりに言うと、アリアはそう?と首を傾げた。

「とにかく治療しましょう。その姿は見ていて痛々しいほどです」

 そう言ってモルガがアリアの痣に手を差し伸べた瞬間、サイシアがその手を掴んだ。

「え?」
「あ」

 掴まれたモルガも、掴んだ張本人であるサイシアもなぜか驚いた顔をしている。そしてそんな二人をイベリスとアリアは不思議そうに見ていた。

「あ、いや、治癒魔法なら俺が。それくらいなら俺でもできる」

 そう言ってサイシアはアリアの痣に手を近づけ、治癒魔法を施した。魔法をかけているので直接触れてはいないが、手のほのかな温度は感じ取れる。

(騎士のサイシアでも治癒魔法使えるんだ。この国の騎士は剣だけではなく魔法も使えるのね。それにしてもサイシアの手がこんなに近くに、しかも首とか鎖骨辺りにあるってなんかこそばゆいし恥ずかしいな)

 いつも優しく撫でてくれている無骨で大きな男らしいサイシアの手を思い出し、アリアはなんとなく胸がドキドキしてしまう。じっとサイシアを見つめるが、サイシアはその視線に耐えきれなくなったのか治癒魔法が終わるとすぐにアリアから離れた。

「ありがとう、サイシア」

 そう言ってアリアが微笑むと、サイシアは頷いてすぐに顔を背けた。その耳はなぜか赤く染まっている。

(え、サイシアってば照れてるの?どうして?)

 どう見ても照れ隠しをしているサイシアを見てなぜかアリアも動揺し、少し顔を赤くする。

(ふう〜ん、そういうことですか)

 モルガはニヤリとした顔でサイシアを眺め、それに気づいたサイシアはバツの悪そうな顔をする。そしてイベリスはよかったね!と嬉しそうにアリアに抱きついた。