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(ハッ!ね、寝てた?えっ?あれっ?私、追放されて野垂れ死んだはずじゃ……)

 目を覚ました前世での追放令嬢メリアは、起き上がると違和感を感じ自分の体をまじまじと眺めた。

(なんだろうこの感覚、なんかいつもと違う、ってあれ?なんで体が毛に覆われているの?しかもなんか頭の方がちょっと重いし、音が大きく聞こえるような……っていうか何この手足!?)

 一刻も早く全身が見たい。そう思い周囲を見渡すと近くにあった池を見つけ、池の方へ歩き出す。だが、それは歩き出すという表現にはほど遠かった。

(え、なんで跳ねてるの?え?何?まさかこれって)

 恐る恐る池を覗くと、そこには以前の自分とは全く違う姿が映っていた。

(え、待って、何このウサギめっちゃ可愛い!シルバーグレーの毛並みはもふもふだしお目目もクリンとしてる。おでこになんか小さな石があるけど……金色で綺麗だわ。可愛いすぎ!って、いやいや違うでしょ。待って、なんで、なんで私ウサギになってるの!?まさか、生まれ変わった!?)

 呆然と池を眺めていると、背後から何か殺気めいたものを感じる。背筋が凍り、ゾワゾワとしてその場から立ち去りたいのに一歩も動けない。

(な、何この気持ち悪い怖い感じ、何?何がいるの?)

 そうっと、静かに後ろを見てみると、茂みの中に赤く光る目が何個も連なっていた。その光る目が少しずつ茂みから出てきて……!その姿は、一見オオカミのような姿をしてるがその口元からはありえないほどの大きな牙が出ている。

(え、オオカミ?じゃない?何この生き物!?えっ、まさか私狙われてる?食べられちゃうの!?ヤダヤダヤダ!)

 メリアは思わずダッシュするが、オオカミのような生き物たちはすぐさま追いかけてくる。ウサギの全速力でもあっという間に追いつかれてしまうのは目に見えた。

(ヤダヤダ、こんなところで死にたくない!せっかくこんな可愛いウサギに生まれ変わったのにこんなあっという間にオオカミみたいな変な生き物に食べられちゃうなんて!まだ誰のためにも役に立っていないのに!)

 メリアは走りながら祈った。もっと速く、もっと速く走りたい!

 そう祈った途端、メリアの額の石と足が金色に光ったかと思うと走る速度が異常に速くなった。

(う、え、え!?まって早い早い速い速い!いやー!)

 砂埃をあげてメリアはオオカミのような生き物をあっという間に離していった。