俺は異世界に行くことに憧れている。どうしても行ってみたいと思い、以前よく使用していたエレベーターは使えなくなってしまったので、別な場所を確保した。ここならば、きっと邪魔されることはないはずだ。

 廃墟になったビルのエレベーターならば問題はないはずだと思い、乗り込んでみる。しかし、ずっと使われていし、電源は切れている。ボタンを押しても扉は開く気配はない。エレベーター以外で異世界に行く方法を考えないとな、そう思いながらビルの中を探検すると、知らない女性に声をかけられた。俺は、廃墟ならば幽霊に違いないと思い、異世界に迷い込んだ喜びに浸る。女性は自分より少しだけ年上だろうか。

「ここで、何をしているのですか?」
「エレベーターを使いたかったのですが。残念だなぁ、実は異世界に行く実験をしようと思って」
「もしかして、異世界へ行きたいと思っているのですか?」

 女性の後ろに知らない女性が血を流して倒れていることに気づく。
「ここは危険です。早く、エレベーターの中に隠れてください」
 女性は青ざめた様子で慌てて、俺の背中を押した。
 そして、なぜかエレベーターの扉が開き、俺は中に押し込まれた。そして、そのままエレベーターの壁に囲まれて、異世界に行くことができたようだ。


★解説
 エレベーターの中に閉じ込められた主人公は、そのまま死亡してしまったという話よ。それにしても、廃墟のエレベーターがなぜその女性が押すと開いたのか、中から開けることができなかったのか……それは謎だけれど、きっと会った女性は廃墟で殺人を犯して目撃者を消滅させたかったということなのでしょうね。