あるところに物好きな実業家がいた。
男性である。年のころは40代。短髪であり、日焼けをしていた。
背は高く中肉中背。
この実業家は金と暇を持て余していた。
男は変わり者。大のオカルトマニアだった。
男は幽霊の物件を探していた。そうして男はちょうどいい幽霊物件を見つけた。事故物件だ。それは一階建ての一戸建てだった。
男はスキンヘッドの不動産屋とその物件を見に行った。
そこはきれいに庭が刈り込まれた家だった。中に入ると、ぴかぴかに掃除されていた。とても事故物件とは思えなかった。お風呂もぴかぴかであり髪の毛1本落ちていなかった。
「ほんとに出るんですかねえ」
と、男。
不動産屋はいぶかしんだ。普通なら幽霊が出る事故物件なんか住みたがらない。
「うーん。その辺はなんともお。私も神様じゃないんで。霊のことまでは」
ふうん、なるほど。不動産屋も神様じゃないから実際幽霊が出るかなんてわからない。
男はとりあえず住んでみることにした。
そうして、引っ越しが始まった。といっても簡単な家具を入れるだけ。男はちゃんと別に家を持っていた。この家に住むのは、幽霊に会うためのものだ。まあ、別荘みたいなものだ。
男はやはり短髪の男友達と冷蔵庫や、テレビなど、必要最低限のものだけ入れた。
さあて、今日からここが俺の別荘だ。全然出そうにないけど、幽霊よ期待通り出てくれよな、と思った。
男は友達と、家や庭を回り、写メったり、動画を撮ったりした。そうして、居間で、何か写ってないか確かめた。
「お、顔のようなものが写ってる」
と、男がいった。
「ただの光のさじ加減だ、よく見てみろ」
と、友達。
確かによーく見ると、そんな感じだった。男は残念だった。
男は動画を見た。
「ううううううううう」
といううめき声が聞こえた。男は喜んだ。
「やった、出た。幽霊のうめき声だ」
と、男は喜んだ。しかし、友達は大爆笑している。
「え」
と、男はいぶかしんだ。
「あ、いや、悪い悪い。これ、俺のいたずら」
と、友達。
男は怒りがこみ上げた。
「あ、ごめんごめん、ちょっといたずらしただけさ。悪い」
友達は沈んだ。それを見て、男は機嫌を直した。
「まあ、いいさ。俺こそちょっとのことで怒って悪かった。まあ謝ってるし、俺も幽霊物件にてんぱってて」
と、男はいった。
「俺もいたずらなんかして悪かった」
と、友達。
「いいってことさ」
その日、友達と飲みながら幽霊が出るのを待とうかと思ったが、怖がりの友達は夕方に帰ってしまった。
「あまりいたずら心起こすなよ。幽霊が怒るかもしれない。面白半分に人のことあおったり、さぐったりしたら、誰だって人を呪ってやろうと思うのさ」
と、友達は言い捨てた。
「ああ、わかってる」
と、男はいった。
「幽霊だって人間と同じさ。やじられたり、さぐられたりするの嫌だろう」
と、友達はいった。
男は友人が行ったあと、家を掃除した。そうして、夕食を取ると、テレビを見、暗くなると、「そろそろかな」と独り言ちて酒を飲みながら、幽霊が出るのを待った。男はオールするつもり。男は幽霊よ出てこい、と心待ちに待った。が、一向に幽霊が出る様子はなかった。
男はスマホを持ち、家の中や庭を見てまわった。が、幽霊が出ることはなかった。男は居間に戻り、スマホを確かめた。顔のようなものが写っていたり、物音が入っていたりはしていたが、幽霊だと確証は持てなかった。
酒を飲みながら、幽霊を待った。が、一向に出る様子はない。ためしに電気を消してみた。男は懐中電灯を持って、家と庭を回った。居間に戻り、スマホをチェックする。顔のようなもの、オーブのようなものが写ってはいるが、超常現象という確証はない。動画に不審な音は入っているが、やはり超常現象の確証はない。
男はお風呂へ入った。シャワー中に超常現象が起こるというのはよくある話。だが、やはり、幽霊はあらわれなかった。
ベッドで仮眠しようと思った。寝ているときに幽霊が現れるかもしれない。男はうとうとした。やがて男は幽霊のようなものが出た気がした。やった、とうとう出たぞ、と思いきや、目が覚めた。
男は上半身を起こし周りを見渡した。幽霊らしきものは見えない。はあ、と男はため息をついた。夢か、残念。
男は丑三つ時、午前2時を待った。
男はドキドキして待った。そうしてとうとう午前2時を回った。男はドキドキした。ちょっと物音がすると、幽霊か、と思ったが、違った。男は懐中電灯を持ち、家じゅうを歩き回り、庭を回った。何か見えたら、幽霊か、と思った。でも幽霊が出る気配は一向になかった。スマホを確認したが、幽霊の仕業という確信のあるものはない。
そうして、男は一夜を明かした。とうとう、日が昇った。窓から日が差し、鳥の鳴き声がした。はあ、と男はため息をついた。
とうとう出なかった。
男性である。年のころは40代。短髪であり、日焼けをしていた。
背は高く中肉中背。
この実業家は金と暇を持て余していた。
男は変わり者。大のオカルトマニアだった。
男は幽霊の物件を探していた。そうして男はちょうどいい幽霊物件を見つけた。事故物件だ。それは一階建ての一戸建てだった。
男はスキンヘッドの不動産屋とその物件を見に行った。
そこはきれいに庭が刈り込まれた家だった。中に入ると、ぴかぴかに掃除されていた。とても事故物件とは思えなかった。お風呂もぴかぴかであり髪の毛1本落ちていなかった。
「ほんとに出るんですかねえ」
と、男。
不動産屋はいぶかしんだ。普通なら幽霊が出る事故物件なんか住みたがらない。
「うーん。その辺はなんともお。私も神様じゃないんで。霊のことまでは」
ふうん、なるほど。不動産屋も神様じゃないから実際幽霊が出るかなんてわからない。
男はとりあえず住んでみることにした。
そうして、引っ越しが始まった。といっても簡単な家具を入れるだけ。男はちゃんと別に家を持っていた。この家に住むのは、幽霊に会うためのものだ。まあ、別荘みたいなものだ。
男はやはり短髪の男友達と冷蔵庫や、テレビなど、必要最低限のものだけ入れた。
さあて、今日からここが俺の別荘だ。全然出そうにないけど、幽霊よ期待通り出てくれよな、と思った。
男は友達と、家や庭を回り、写メったり、動画を撮ったりした。そうして、居間で、何か写ってないか確かめた。
「お、顔のようなものが写ってる」
と、男がいった。
「ただの光のさじ加減だ、よく見てみろ」
と、友達。
確かによーく見ると、そんな感じだった。男は残念だった。
男は動画を見た。
「ううううううううう」
といううめき声が聞こえた。男は喜んだ。
「やった、出た。幽霊のうめき声だ」
と、男は喜んだ。しかし、友達は大爆笑している。
「え」
と、男はいぶかしんだ。
「あ、いや、悪い悪い。これ、俺のいたずら」
と、友達。
男は怒りがこみ上げた。
「あ、ごめんごめん、ちょっといたずらしただけさ。悪い」
友達は沈んだ。それを見て、男は機嫌を直した。
「まあ、いいさ。俺こそちょっとのことで怒って悪かった。まあ謝ってるし、俺も幽霊物件にてんぱってて」
と、男はいった。
「俺もいたずらなんかして悪かった」
と、友達。
「いいってことさ」
その日、友達と飲みながら幽霊が出るのを待とうかと思ったが、怖がりの友達は夕方に帰ってしまった。
「あまりいたずら心起こすなよ。幽霊が怒るかもしれない。面白半分に人のことあおったり、さぐったりしたら、誰だって人を呪ってやろうと思うのさ」
と、友達は言い捨てた。
「ああ、わかってる」
と、男はいった。
「幽霊だって人間と同じさ。やじられたり、さぐられたりするの嫌だろう」
と、友達はいった。
男は友人が行ったあと、家を掃除した。そうして、夕食を取ると、テレビを見、暗くなると、「そろそろかな」と独り言ちて酒を飲みながら、幽霊が出るのを待った。男はオールするつもり。男は幽霊よ出てこい、と心待ちに待った。が、一向に幽霊が出る様子はなかった。
男はスマホを持ち、家の中や庭を見てまわった。が、幽霊が出ることはなかった。男は居間に戻り、スマホを確かめた。顔のようなものが写っていたり、物音が入っていたりはしていたが、幽霊だと確証は持てなかった。
酒を飲みながら、幽霊を待った。が、一向に出る様子はない。ためしに電気を消してみた。男は懐中電灯を持って、家と庭を回った。居間に戻り、スマホをチェックする。顔のようなもの、オーブのようなものが写ってはいるが、超常現象という確証はない。動画に不審な音は入っているが、やはり超常現象の確証はない。
男はお風呂へ入った。シャワー中に超常現象が起こるというのはよくある話。だが、やはり、幽霊はあらわれなかった。
ベッドで仮眠しようと思った。寝ているときに幽霊が現れるかもしれない。男はうとうとした。やがて男は幽霊のようなものが出た気がした。やった、とうとう出たぞ、と思いきや、目が覚めた。
男は上半身を起こし周りを見渡した。幽霊らしきものは見えない。はあ、と男はため息をついた。夢か、残念。
男は丑三つ時、午前2時を待った。
男はドキドキして待った。そうしてとうとう午前2時を回った。男はドキドキした。ちょっと物音がすると、幽霊か、と思ったが、違った。男は懐中電灯を持ち、家じゅうを歩き回り、庭を回った。何か見えたら、幽霊か、と思った。でも幽霊が出る気配は一向になかった。スマホを確認したが、幽霊の仕業という確信のあるものはない。
そうして、男は一夜を明かした。とうとう、日が昇った。窓から日が差し、鳥の鳴き声がした。はあ、と男はため息をついた。
とうとう出なかった。