「ご乗車ありがとうございました」



そうこうしているうちに早くも東口のホテルに到着し、私はお金を払ってタクシーを降りる。



目の前に聳え立つ高級ホテルを見るとこれから始まるパーティーを想像してしまい、少し憂鬱な気分になった。



また他の会社の関係者と気を遣いながら話さなければいけないとは…正直そういうことは得意ではないし、精神的に疲れる。



それでも行かないわけにはいかず、重い足を運びフロントへ向かう。




やっと着いた無駄に広いフロントをウロウロしていると後ろから唐突に抱き締められた。



「わっ…、」


「しーおーりー!」



後ろから私の腰に回された腕は痛いくらいにぎゅうぎゅうしてくる。


思わず顔をしかめ振り向くと、立っているのはニコニコと相変わらず元気一杯の笑顔を向けてくる貴史さん。



「びっくりするじゃん…」


「驚かせたかったんだから当然だろ?」



この悪戯っ子のような言動は何年経ってもなかなか慣れない。


当の本人は楽しんでいるようなので別にいいのだけれど。



「……昨日の電話の用件は?」


「知りたいか?」


「焦らさないでよ」


「あ、その台詞なんかエロい」


「なっ…」


「もっかい言えよー」


「言わないし…!」



自分の顔が熱くなるのが分かる。


こういう時、私はすぐ顔に出てしまうタイプだから困るんだ。



「ツンデレだよなぁ」


「…………」



いい加減な憶測は是非やめていただきたい。