* * *



 ジリリリリリ…


日曜の朝、目覚めると隣には誰もいなかった。


重い身体を無理矢理起こし、ソファから周りを見渡す。



「…あ」


テーブルの上に書き置きとまだ温かいフレンチトーストが置いてあった。



“仕事行ってきます。また会おうね”



一条さんらしい丁寧な字。


毎週土曜は彼の家に泊まる。


親には友達の家に泊まっていると思い込ませているけれど。



「…いただきます」


彼の作るフレンチトーストは美味しい。








今日はパーティーがある。


様々な会社の社長とその家族が集まって株式持ち合いだ何だと親しみ合ったりアドバイスし合う、くだらないパーティー。


皆自分の利益の為に機嫌を取ったり愛想良くしてるだけなのがあからさまに分かる。




こういうパーティーはそう頻繁にするわけではないけれど、『Ru-ju』というデザイン会社の社長令嬢である私――伊集院 栞は嫌でも参加しなければならない。



「ごちそうさまでした」


なるべく早くフレンチトーストを食べ終え荷物を持って彼の部屋を出た。


合鍵で施錠し、近くの駅まで行ってタクシーを呼ぶ。



現役高校生の折角の休日が親のパーティーのせいで潰れるってどうなんだろう。


今更、あんな両親に何か文句を言う気にはならないけど。