「口の利き方分からせてやらないとね?」



それどころか一気に火がついてしまったようで、彼の吸い込まれるような瞳の奥が怪しく光った。


更には独特のシャンプーの良い香りが漂ってきて、それが一条さんの匂いだと直ぐ分かってしまう自分が余計に恥ずかしくなった。




「――――っ、」


声にならない喘ぎは何処かへ吸い込まれた。





彼は何故私に執着するんだろう。


彼は何故私と関係を持つんだろう。


彼は何故私を束縛するんだろう。




考えれば沢山の“何故”で埋め尽くされる。


私は曖昧で不確かな熱の中で揺らいでいて、そこから逃げる術すら教えられず、もがくこと足掻くことも許されていないのだ。







「だらしないなぁ」



耳元で囁かれる言葉は甘い吐息混じり。


翻弄される身体とは裏腹にほんの僅かな理性を残す脳内。



しかしそれも直ぐに消え失せ、私は理性的でも上品でもない淫らな私へと変貌する。



人間味の欠片も帯びず、ただ獣のように欲望を満たす。



―――私にその感覚を、自由を、男を教えたのは、他でもない彼。



親に嘘を吐き鳥籠の中から飛び出す背徳的な感覚は、想像を絶する程に甘美で、まるで麻薬。



何もかも、彼の考えていることも、感じていることも、分からなくなる。