その姿を見て、心底驚いたような顔をする貴史さん。


「は!?おま…何でこんなところにいるんだよ?」


「私がブックストアにいちゃおかしい?」


美人さんは呆れ顔でそう答えた。



「いや…そうじゃなくて。今日はあいつとデートじゃなかったのか?」


「バカね。学生同士のあなた達と違って、真っ昼間からデートなんてできないわよ。向こうは仕事で忙しいんだし。会うのは今日の夜中」


「…ふーん。意外とラブラブなんだな」


「そっちこそ。栞ちゃんと仲良いじゃない。羨ましい」



ちらりと横目で見られ、ドキリとしてしまう。


何か、貴史さんと親しげ…?誰なんだろう。




「栞、こいつ俺の幼なじみなんだよ。洋子っつーの」


「…洋子さん、ですか」



軽く頭を下げるとふふっと微笑まれた。



「邪魔してごめんね。たまたま貴史が目に入って、私の話してるみたいだったから」


「いえ…邪魔だなんて」


「うふふ、可愛いー。でもせっかくデートなんだし2人で楽しまなきゃね。私はこれからアイスでも買いに行くわ」


「分かってんじゃねぇか。さっさと行け」


「…あんたはほんと可愛くないわよね」



洋子さんは貴史さんをぎろりと睨んでから、私に笑顔で手を振って去っていった。


貴史さんに幼なじみがいたんだ…しかもあんな美人の。


今日は驚くことばかりだ。




私は洋子さんが見えなくなったのを確認してから、話を元に戻す。



「もしかしてSOROの社長さんのお母様がいないって話、結構有名なの?」


「いや、そんな有名でもないんじゃね?俺もこの前洋子から聞いて始めて知ったし」


「…洋子さんって物知りなんだね」



そう言うと、貴史さんは苦笑した。


「物知りっつーか、まぁ、当たり前だろ。――洋子は、SOROの社長の許嫁なんだしな」