『――…これより、パーティーを開演致します。まず最初に――』



高級ホテルのとある階を貸し切りにして行われるこのパーティー。



舞台にはすぐいなくなるであろう言い訳程度の司会が立っていて、周りにはメディアがウロウロしている。


こういうパーティーが始まったのも極最近…数年前のことで、雑誌やテレビでも話題となり無関係な一般人にとっては社長やその家族同士の会話を見て楽しむ娯楽のようになってしまったようだ。



アドバイスをし合い睦まじくなる社長たちもいれば、気に触ることをつい言ってしまい相手を敵に回してしまう人もいる。


幸か不幸かはその人次第。




「栞、似合ってるぜ」


「……そっちこそ」




私の隣には珍しくスーツを着ている貴史さん。


まだ大学生なのでスーツを着る機会はこういう時しかないらしいけれど、どうも…こう、スーツを見るとあの男を思い出す。


その度無理矢理邪念を振り払い平静を保つ。



貴史さんが私にプレゼントしてくれたのはクリーム色のロングドレスで、おまけに可愛らしいネックレスまでセットだった。


どれも私好みで申し訳なくなってしまうほど。



「どこかに座るか?」


「まぁ、私たちに話し掛けてくる人なんてほとんどいないしね…」




社長本人たちは食事をする暇もなく話し合ってるみたいだけど、私たちはその子供であって会社とそこまで深い関わりはない。



強いて言うなら「流石貴方の子供ですわね、とっても可愛いオホホホホ」なんて、ご機嫌取りのネタに使われるだけ。




私たちは隅にあるカウンターに2人で座り、窓からの景色を眺めた。




「そっちの会社状況はどうなんだよ?」


「……どうしたの、急に真面目になって」


「こういう場だし会社の話しとけば知的に見えるんじゃねぇかなって」



それもそうだろうけど、私たちの会話に耳を向けている人なんて大概いない。


でも、真面目さの欠片もない話をするよりはマシか…。



「私は家族と会社の話しないから状況は分からない」


「やっぱどこもそんなもんか…」


「あぁ、でもSOROと対立してるのはなんとなく分かるかも」


「SOROって…あー、ライバル会社の?」


「そ。Ru-juと並ぶ大手デザイン会社」


「でもあそこの社長って数年前に変わったんじゃなかったっけか?」


「……まぁね。前の社長が早死にしたみたい」