私の手の上で変かを見せた絵本も,2人の触れた感触も。

手のひらに残って消えない。



「2人って……どこの?」

「後ろ,私の後ろに立ってる子!! 双子の,あの子達だよ!!」



何を言うのと私はぎゅっと目を閉じた。

今井さんが,困惑したように,私を絶望へと突き落とす。



「だから……誰の事を言っているの? 双子なんて……どこにも」



突き飛ばされたような気持ちになった。

けれど実際には突き飛ばされたのではない。

その代わり,太陽くんと花ちゃんが私の肩を力強く引っ張る。



「ひっ……」



私は耐えられなくて,か細い悲鳴をあげた。

力ずくで振り向かされたさき,絵本に挟まれていた封筒が見える。

何故か,レターはびっしりと文字で埋め尽くされていた。

映った単語の数々に,身体が強張る。



『双子』『呪い』『返して』『拐った』『殺さないで』



懇願するような,双子を失った/喪った遺族の手紙。

私は今から,自分がどうなるのかを悟った。



「私は」「ボクは」

「「もういない」」

「梨乃ちゃんは」「智くんは」

「私がもらう」「ボクがもらう」

「「ようやく,魂が昇る。これ以上,止まった時は生きられない」」

「ごめんね」「ごめんね」

「「先に,逝くね」」



ぎゅっと願うように握られた手。

花ちゃんと太陽くんの瞳がごろんと落ちて,私はもう悲鳴もあげられずに戦く。

口の中が真っ黒になって,風船のように大きく口を開けた花ちゃんは私を飲み込むように覆い被さってきた。

やだ,やだ……わたし。

いやいやと首を振っても,もがいても。

2人に捕らえられた両手は,びくともしない。



「大丈夫だよ」