じゃあ



「2人の名前は?」



震える声で,私はもう一度新たに尋ねた。

2人は手を繋いで,同時に答える。



「「わからない」」

「ボクが」

「私が」

「「誰なのか」」

「「だれ,だったのか」」



太陽くんが,私の肩に触れる。



「お願い"ボクたちに,ちょうだい"」

「梨乃ちゃんっごめんね……次,がんばって。私たちに,替わって」



ぐすんぐすんと頭に響いた。



「大丈夫。直ぐに次の人が来てくれる」

「何度も,チャンスはやって来る」

「嫌になったら」

「辞めたくなったら」

「「もういいやって思ったら」」

ー何て言えばいいか,わかるよきっと。



「その時までがんばって」

「梨乃ちゃんの名前は」

(さとし)くんの名前は」 

「ボクたちに」「私たちに」

「「ちょうだい」」



私は,教えていない。

絶対に,兄の名前は教えていない。



「い……ゃあ!!!」



私はとうとう双子の腕をはね除けて,児童館へと戻った。

汗が吹き出して,どくどくと寿命の縮まる音がする。



「今井さん……っっ!!!!」



私は今井さんにしがみついた。



「っわぁっ!! り,梨乃ちゃん? どうかしたの……?」



いつも通りの今井さんが私を振り返って,私は少しほっとする。

今井さんまで変になってたら……

もしかしたら反応してくれないかとすら思った。

じわりと瞳に涙がたまる。

花ちゃんの泣き声が聞こえる様で,私だって泣きたいと思った。



「おかしいの,あの子達。どこから来たの? いつも来るの?? 2人とも,すっごく怖いこと言うの」