『きょうだいが いました
よろこびにみちあふれたあにと
かなしみにみちあふれたいもうと
とてもきれいな ふたごのきょうだい』



ふと振り返った。

なにかが聞こえた気がする。

つい,双子を見た。

綺麗な顔が,それぞれ違う表情へと変わっていく。



「あはは」



何が楽しいのか,太陽くんが平和そうに笑う。



「ぅ,ぅあぁぁぁぁあん」



何が悲しいのか,花ちゃんが太陽くんの服をつかんで鳴き始める。

私はゾッとして,手にしている紙を握りしめた。




「はい。どうぞ」




太陽くんが私に近づいて,児童館の中にあったはずのあの絵本を渡してくる。

恐怖を感じながら受け取ると,私の持つ頁が取り込まれその絵本は"完成"した。


『むかしむかし ふたごのきょうだいがいました
よろこびにみちあふれたあにと
かなしみにみちあふれたいもうと
とてもきれいな ふたごのきょうだい』

『あるひ あにはいもうとが
いもうとはあにが うらやましくなりました
おたがいにないかんじょうを ほしがって
ふたごのたましいは やがてひとつになりました』

『そしてながいつきひが ながれたころ
ひとつのたましいは ふたつにわかれ
またあたらしい もとのふたごになりました』

『ふたごはいつも おたがいのことばを
くりかえすように はなします
ふたごは いつもふたごにうまれ
もういちど ひとつになるために』

『なんども たましいを
こうたいしていきました
いつか ひとつになるために
きずなのつよい ふたごと 
なんども なんども いれかわりました』

『そのほうほうは とてもかんたんです』



「梨乃ちゃん,ごめんねぇぇ」



雄叫びのような嗚咽を漏らしながら,花ちゃんが近づいてくる。

金縛りにでもあったかのように,私は動けなくなった。

きゅっと手を握られると,心臓を捕まれるような恐怖を感じる。



「ボクは,"太陽くん"じゃない」

「私も,"花"ちゃんなんかじゃないっー」

「「こんな顔,しらないっっ……っ」」