「花ちゃんと太陽くんね。いい名前」



そう笑いかけると,花ちゃんはにこりと笑った。



「梨乃ちゃんはその絵本が気になるの?」

「続きが読んでみたいの?」



2人は息を揃えてぴしりと絵本を指す。

私は少し考えて,こくんと頷いた。



「でも無いの。だから先ずはあそこの今井さんに聞いてみなくちゃ」

「必要ないよ」

「大丈夫だよ」



え……?

はっきりと引き留める双子に,私は目を丸くする。

どうして? と首をかしげると,2人はそれぞれ立ち上がった。



「あっちに,おんなじの落ちてたもん」

「破れた頁がたくさん」

「なんだろうねって隠したの」

「梨乃ちゃんになら見せてあげる」



ぐいぐいと口々に引っ張られて,私は思わず抵抗するように座ったまま見上げる。

それでも諦めず引っ張る双子に,私はとうとう立ち上がった。



「あっちって? 遠くには行けないよ。ままに言われなかった?」 



流石に私が少しの間勝手に出ていくくらいは許されるけど。

この双子が誰かに預けられたのなら,勝手に連れ出すことはできない。 



「遠くじゃないよ」

「遠くじゃない」

「だってあそこの滑り台の後ろ」

「大きな木の後ろにあるんだもん」



ねえねぇねえと前に引かれる。

どうしてか私は怖くなって,今井さんを振り向くけれど。

児童館にある滑り台位までなら……と目を凝らしながら前に進む。

もう,絵本なんてどうでもよくなっていた。

きゅっと花ちゃんが私の手を繋ぐ。

きゅっと,太陽くんも私の手を繋いだ。

これって,普通……なのかな。

同じぐらいの年の頃,なんてもう思い出せない。