「はぁっ! はぁ!」

 ヘルメットをして自転車を走らせた先は、学校の裏山だ。
 裏山といっても、ちょっと登って遊ぶような小さな山ではなく、本当に森がある大きな山なのだ。

 ふもとには大きな遊具のある、小さな子も沢山来る公園がある。
 そこからさらに登った山の真ん中には神社があって、それより『上は行ってはいけない』というのが子供たちに伝わる決まり。
 神社の外灯の下に自転車を停めた。

「ちょっとだけ上に……!」

 でも光はそれより、ちょっと先の……不思議な石がゴロゴロしている場所へ走る。

『ストンヘンダ』

 イギリスのストーンヘンジを真似して、クラブのみんなで名前を付けた。

「(もう、みんななんか知らないよ! あんなに準備したのに!)」

 うらぎられた気持ちで、光はストンヘンダに向かって走る。

「はぁ……はぁ……」

 ストンヘンダの一番大きな岩の影に隠していた道具。
 屋根裏部屋のおじいちゃんの部屋にあった大きな大きな魔法の本。

 そこに書いてあった特別な『召喚魔法』
 どこの言葉かわからない本を、おじいちゃんはずっと日本語に直し続けていたのだ。