「今日のご飯なに!?」

「今日はカレイの煮付けだよ」

「えっ! またカレー! やったぁ」

 麻那人の瞳が輝いた。

「麻那人、給食のカレーだと思ってる?」

「うん! 昼も夜も食べたい!」

「カレーじゃないよ」

「ん?」

「あはは、カレーライスだと思ってるのかな? 麻那人君」

「違うんですか?」

 目をパチクリさせる麻那人。

「今日の夕飯はお魚だよ!」

「魚のカレーライス?」

「違うよー! カレイっていう名前のお魚!」

「ふむふむ、そのカレイという魚の……なに?」

「煮付けと言って、魚を甘じょっぱく煮た料理だよ。麻那人君が食べられるといいんだけど」

 お父さんがちょっと心配そうに言う。

「僕、なんでも食べるよ。楽しみだなぁ。とってもいい香りだ。甘じょっぱいってどんな感じかなぁ」

 麻那人はクンクンと、鼻を動かす。
 猫のクロも一緒に、クンクンと鼻を動かした。

「ふふ。麻那人君は猫みたいだなぁ。じゃあご飯にしよう! 光、手伝って!」

「はーい!」

「僕も手伝うよ」

 お父さんと二人でも、とっても楽しい。
 でももう一人、悪魔王子だけど増えたら、なんだか楽しさも増えるなぁと思った。

 カレイの煮つけを見て麻那人は目を丸くする。

「さかな……」

「うん。食べたら頭がよくなるよ!」

「……なにそれ……古の賢者の加護でも付与してるの?」

「んん? 麻那人君、なんて?」 

 麻那人の言葉に、反応するお父さん。
 
「ち、ちがうって~! ドコサヘキサエン酸っていうのが脳にいいんだって」

「へぇー すごい魔術だ。ドコサヘキサエンサンか……」

「んんん? 麻那人君、なんて?」

 また麻那人の言葉に、反応するお父さん。
 慌てる光。

「お、お父さん、なんでもないって! 魚って海を泳いでいるんだよ! 知ってる?」

「あぁ。知ってる。こんな形で泳いでるんだぁ」

 カレイの煮つけは、もちろん綺麗に切られた姿だ。
 このまま泳いでいるわけもない。