「そうですのぅ……さすが王子でございます」

「え? どっから声が? あ! まんじゅう悪魔おじさんが、ランドセルにキーホルダーになって付いてる!」

 麻那人のランドセルに、ぶら下がっていたキーホルダー!
 大きな目がこっちを見た。
 
「誰がまんじゅうじゃ!」

「い、言ってないよ!」

 言ったけど……。
 誤魔化そうと、さっきまでの話に光は戻す。

「この町が怪異が起こりやすいって……?」

「うん、たとえば『追いかけ鬼』もふつうなら、あんな人をおそうレベルにはならない。でもこの町では実体化してしまう」

「えぇ? なんで……?」

よどみ(・・・)けがれ(・・・)がたまりやすい性質なのか……答えはわからない。僕が誘われたのも、この町のそういう気質ゆえ、なのかな……」

「ふーん?」

 わかるような、わからないような話だ。

「あの、ステッキは持ってきたかい?」

「あ……おじいちゃんの? うん、麻那人が言うから持ってきたよ……学校で見つからないようにしないと」

「大丈夫さ。それを身に着けていないと……危ないよ」

「ま、またそういう事を言う~~」

 おじいちゃんの赤い石がついたステッキ。
 麻那人から、それを学校にも持っていくように言われたのだ。

「この町の小学生達は、大変だなぁ。くくく」

 光は気付いていなかったが、自動販売機の下から伸びる長い白い手。
 麻那人はわざとに、思い切り踏んづけたのだった。
 白い手は飛び上がって痛がり、消えた。