「むっふ~美味しい~~」

 光の幸せそうな顔を見て、麻那人は興味津々のようだ。
 
「美味しそうだね! 僕も次はそれを作ってもらおう~♪」

「もう~~ほんっと、調子がいいんだから……」

「うわぁ~このあったかい泥水みたいなの、美味しいなぁ」

「ココアっていうの!」

 麻那人は何もかもが初めてのようで、ココアも嬉しそうに飲む。
 嬉しそうに歯ミガキをして、身支度を整え、ランドセルを背負う。

「どうだい?」

 黒光りする、かっこいいランドセルに麻那人はご機嫌だ。
 昨日とは違う、シャツに薄手のカーディガン。
 確かに、すごく似合っているけど……。

「い、一緒に行くの?」

「うん♪ 学校の場所、知らないし」

「(場所の問題じゃないんだけど……だって手続きとか、どうなってるの!?)」 

「先日、ご挨拶に行ってるけどよろしく頼むよ光」

「えっ!? あ、う、うん(挨拶なんてしてるわけない……絶対、さいみん術だ!)」
 
「ふふ、準備はバッチリさ」 

「あぁ~~……こんなことある……? 夢じゃない~~」

 お父さんに見送られて、二人で小学校へ向かう。
 光はどんよりだが、麻那人は鼻歌を歌っている。

 しかし、ふと足を止めた。

「どしたの?」

「……この町は……やっぱり不思議だ」

「え?」

 朝の爽やかな風に吹かれて、それなのに麻那人は少し顔をしかめた。

「ここの町は、怪異が起こりやすいだろうね」

「怪異……」

 怪異、とは不思議で異様なこと。
 お化けや妖怪……悪魔なんかをいう言葉でもある。