「……いつ帰るのよぉ?」

「まぁ十分に~いろんなことをして、満足したらかな?」

「早く帰ってよぉ~!」

 悪魔の王子が家にいるなんて、ぜったいによくない! と光は思う。
 妖精の王子だったら……よかった? とも考える。

 うぬぬ……と頭を悩ませる光。
 麻那人はクスっと笑う。

「僕が早く帰っちゃったら、光はどうやって身を守るのさ?」

「どういうこと……?」

「さっきの追いかけ鬼のこと忘れちゃった?」

「わ、忘れるわけないよ」
 
 追いかけられた時のことを思い出すと、背筋がゾクッとする。
 
「あいつは、また来るよって言っただろ?」

「でも……もう追いかけてこなかった」

 そう。
 帰宅して、オムライスを食べて、お風呂に入って、アイスを食べても何も起こらない。

「君のニオイを覚えているよ。今来ないのは、この家にいるからさ」

「家の中だと、襲ってこないの?」

「いや……この家は特別なんだよ。君のおじいちゃんが、強い結界を張っている」

「えっ……」

「僕達は超上級悪魔だから、人間の作った結界くらいは、まぁ大丈夫だけどね。あの鬼にはバリアになる」

「一体何者なのか……お前の祖父は。あ~甘いチョコアイスのあとにしぶいお茶が美味い」
 
 ファルゴンはもうアイスを食べ終えて、勝手に急須で淹れたお茶を飲んでいる。
 
「おじいちゃんは……魔術の研究をしててすっごい人だったんだよ!」
 
 でも、誰にも認められず誰にも理解されず……ひっそりと研究していたおじいちゃんだった。