「あ、悪魔王子! あんた!」

 お父さんは今お風呂に入っているから自由に話せる。

「麻那人だって。マナト~言ってみて? はい、ご一緒に~、マナト~」

「……マナト~~~」

「マナト~」

「……マナト~~~」

「よくできました!」

 一緒に何度か英語の時間のように繰り返した。
 ハッ! と、光はまた我に返る。
 
「ど、ど、どういうつもりなのよぉ!」

「ん~? だから異世界留学みたいな感じかな?」

 異世界とは、こことは別の世界。
 つまり悪魔界から、人間界への留学……??

「お父さんに、さいみん術にかけたの?」

「うん。でも別に悪い影響はないよ?」

 そうは言われても、安心はできない。

「悪魔のツノとか尻尾は? なんで無いの?」

「麻那人様の~~偉大なる魔術で、人間化されたんじゃあ!」

 悪魔王子と光の間に現れたのは、丸い悪魔。

「あ! まんじゅう悪魔おじさん! 隠れてたんだね!?」

「誰がまんじゅうじゃい! ワシにもチョコアイスちょうだい」

「ん、もう~6個入なのに! もうあと1個しかないじゃん~!」

 いつもお父さんと半分こしているから、急に同居人が増えてアイスの減りが早い!

「というわけで、麻那人様の偉大なる魔術で人間化されたんじゃあ! 人間化されたんじゃあ! 大事なことなのでニ回言ったわい! んー美味しいチョコアイスおいちい」

「人間化も魔力が必要だから、一日に使える魔術が三回までになっちゃうんだけどね」

 魔術が使える回数?
 そんな事は私に関係ないよ、と光は思う。