光がもう絶体絶命を感じた瞬間。
自分の目の前に追いかけ鬼の口が巨大に開いて……その口の奥のぶらぶらした、のどちんこが見えた時だった。
真っ暗なその先に飲み込まれたら、どうなってしまうのか。
光のほっぺたに涙が流れて、一秒がゆっくりに思えた……その時だ。
「はい! ナイーーーーーーース……!!」
明るい声が聞こえた。
そう、休み時間の男子の声のような。
「……え?」
「……シューットーーーーーーーー!」
追いかけ鬼はぶぎゃっと潰れた形になって、その瞬間に横に吹っ飛んでいった。
「……ほえ?」
『ぶぎゃ! ぼんごへっ!』
追いかけ鬼はサッカーボールのように飛んで、大きな木ぶち当たったのが見えた。
「……わ、わぁ!?」
自分の声がアホっぽいのはわかっているけど、そんな声しか出てこない。
「ナイスゴール!」
「……ほわ……」
腰の抜けた光が見上げると、そこにいたのは男の子だ。
顔はかっこいいと言っていいかもしれない。
長めの黒髪が暗がりでもサラサラとなびいてる。
大きな瞳は黄金色に輝き、かと思えば紫や赤にもユラユラ色が変わって見える。
鼻も高くて整った唇からは、なんと牙が見えた。
そして頭にあるのはツノ!?
服装はまるでドラキュラのような洋服で、長いマント。黒いブーツ。
「(こ、これは……これは……まさか!?)」