「笑ってるんじゃないよ、思い出し笑いだよ」

 俺はそう言い訳をする。思い出し笑いであることは全くもって嘘ではあるが、もし雅子が生きているということを言ってしまったらまだ引きづっていると言われるかもしれない。

 現に俺は過去に言ってしまったことがある。その時は全く相手にされず、哀れそうな顔をされたのだ。

 あの時末広は俺が現実を直視できていないと思っていたのだろう。あの事件の七ヶ月前に父親が病気で亡くなっていたのもあり、おかしくなっていたとも思っていたのだろう。
 だが、過ぎたことだ。今思い返しても意味がない。

「思い出し笑いでも不謹慎すぎるけどな」
「ああ、それは悪かった」

 俺は形だけの謝罪をする。雅子が見えている俺には謝る理由がないのだ。雅子に謝れと言われても、ここにいるんだし。