「そんなこと言わなくていいじゃん、私は現世にいるよ」
「でも、お前幽霊じゃねえかよ」
「私は幽霊なんかじゃありません、生きています」
「そうは言ってもお前は俺以外の人には見れねえだろ」

 そう、雅子はもう亡くなっているのだ。三ヶ月前に彼女が光の家から自分の家に帰るその時にトラックに轢かれて、即死だったのだ。

 その時俺はいつものように雅子が普通に家に来るものだと思っていた。いつもの日常が待っていると思っていた。

 しかし、現実は残酷だった。雅子はその日家に帰って来ず。待ち続ける間に、俺の家の電話がなった。親がいなかったから俺が電話を取った。どっかのアンケートとか、おじさんならとかだと思っていた。だが、内容は違った。

 俺がその内容を聞いた時に状況を理解するのに時間がかかった。

 雅子が死んだと言うのだ。その言葉をすぐに飲み込める人などこの世にいないだろう。

 まさか彼女がこんな形でいなくなるとは全くもって思っていなかった。これからも一緒に楽しく暮らせるのかと思っていた。

 しかもその日はくしくも俺の誕生日だったのだ。彼女に祝ってもらう予定だった正にその日に事故が起きたのだ。

 つまり俺の誕生日と雅子の命日が重なる形になってしまった。しかし、驚くのはそのあとだった。俺がお葬式の日に泣き喚いていると、目の前に幽霊である雅子が現れたのだ。

 その状況を理解するのに時間がかかったのだが、理解するや否や、喜び、大声で歓声を上げた。その時の喜びようと言えば、周りの人に状況を考えろと怒られたぐらいだ。だが、叫ばないでどうする。喜びを表現しないでどうする。だが、周りのみんなは不思議な顔をしていた。

 つまり、雅子は俺以外の人には見えなかったのだ。俺の後母親、雅子の両親を含めた誰にもだ。だが俺は周りの人に雅子の存在を認識してもらえなくても、今こうして雅子と暮らしているという事実だけで満足しているのだ。本当はみんなにも雅子の存在を認識して欲しいだけだけど。