これから月に一度の朝礼が行われ、学園運営に前向きな若き理事長の姿もある。

 実は私と理事長は遠縁にあたり、この職も斡旋して貰ったのだ。もちろんコネによる採用を声高に主張するはずなく一般職員は知らないし、知られたくない。

 理事長の視界に入らないよう位置取り、司会進行役へ意識を向けた。

「ごほん、それでは全体朝礼を始めます」

 ちなみに副教頭は私が学生として在籍中も学園にいた古株、かしこまる前の咳払いも健在の様子。

 私は教育現場の末端から学園が置かれる状況を聞く。

 昨今、学生を取り巻く環境は物と情報に溢れ、取捨選択がとても難しくなっている。

 SNSを介したトラブルが絶えず、いじめ・パパ活・薬物の過剰摂取などの社会問題は、創立百周年を迎える星宮女子学園とて他人事じゃない。

「我々教員が今一度襟元を正し、生徒の安心して学べる場所を死守せねばなりません!」

 理事長の手前か、副教頭の訴えはパフォーマンス染みる。しかし言っている内容は概ね賛同を得られたようで、まばらであるものの拍手がわく。

 星宮女子学園は私学、教員の給料形態は公立校に比べれば悪くない。ただし、職責と賃金を秤にかけた場合、釣り合うかは微妙なところだが。

 拍手が途切れるのを待ち、一人が挙手をする。