女子高ってメイクポーチみたい。きらきら輝くためのアイテムが沢山詰まって、ひしめき合っている。



 産休代替の保健医とし、ここ星宮(ほしみや)女子学園に着任した私『月見里(つきみさと)寧音(しずね)』は警備員が見守る校門を潜ると教員用出入り口へ向かう。

 真新しい制服、進級して丈が短くなったスカートと擦れ違う際、平等な挨拶を心がけるも彼女等は配慮など意に介さず駆け抜けていく。

 季節はーー春。散りかけの桜が舞っていた。

「おっ! いたいた、月見里先生、おはようございます!」

 パンプスを履き替えていると大きな声で呼び止められる。

「……おはようございます。壬生先生」

 張りとボリュームのある声音をとっくに認識しているが、彼の顔を見てから気付いた顔をしておく。

「いい天気ですねぇ、朝練日和でしたよ」

「そうですか。部活の指導、お疲れ様です」

「あはは、指導っていっても俺は見てるだけですけどね!」

「……そうですか」

 会話の流れで並んで進む。謙遜か、本当に見ているだけか興味はないものの、彼が顧問する女子レスリング部は全国的に名が通っている。

 なんでも先だって放送された密着取材ではイケメンコーチとして紹介されたとか。