「分かった。じゃあ、一緒に寝る」


 あたしはそう言って玲哉の胸の中に飛び込んだ。勝負だ、勝負。こうなったら物理的に距離を縮める。寝たいと言うなら寝てみろ。そして少しは私が女だって意識するがいい。


 「重たい。千秋」

 「抱き枕にしていいって言った」

 「上に乗るとは聞いてない」

 「一緒に寝たいんでしょ?」


 上から覗き込むように玲哉を見る。コテッと首を傾げると玲哉は口を結んで真顔であたしを見つめてきた。瞬きすら少なく真っ直ぐに。


 何だか……、見たこともない顔だ。あれ?意外と手応えあり?革命が起きた?なんて期待してしまう。


 「これじゃ寝れなくない?」

 「じゃあ、退くから頭を撫でてよ」

 「なんで?」

 「眠りやすくなるから」


 いかにも取ってつけたような理由を述べたあたしに玲哉は「ふーん」と一言だけ呟いた。あたしの顔を見て何か考え込むような顔をしている。


 でもまぁ、直ぐに観念したらしい。言われた通りあたしの頭を撫で始めた。子どもをあやすように抱き締めてきつつ。


 「いや、ちょ」


 まさか本当にされると思ってなかったから内心焦る。距離が縮まりすぎて恥ずかしい。本気でイチャついてるみたい。


 やばい。早まった?いや、でも、これを堪えれば何か進展があるはず。玲哉だって内心ドキドキしているに違いないんだから。



 今はまぁ、澄ました顔をしているけど、これからはあたしのことを女として意識しまくりなはず。何かする度に照れまくりなはず。