そして25歳の午前9時。

 眩しいくらいの快晴の朝。今日は昭太も有給休暇で仕事はお休みだ。


 「昭太、起きなよ」

 だから今日、あたしは別れを告げることにした。


 「あ、うん」

 寝起きの良い昭太はあっさりとベッドから起き上がって。


 「おはよー。真梨」


 いつもの如く、朝から眩しい笑顔をあたしに振り撒いてくる。


 昭太の笑顔が子供の頃から大好きだった。


 「ほら、早く行かなきゃ」
 「そうだな」


 勝負好きな昭太が心の底から大好きだった。


 「直ぐに着替えて」
 「わかった」


 きっと、これからも悔しいくらい大好きだと思う。


 「じゃあ、行こっか。真梨」
 「うん……」


 いろいろあった25年間。
 やっぱり別れは寂しいけど、もう迷わない。

 あたしは、きっぱりと別れる。
 この玄関を抜けたら、もうお別れだ。


 「待って、昭太……」
 「何?」
 「婚姻届は?ちゃんと持った?」


 今日、あたしは “宮城” に別れを告げて “佐野” になる。



 Fin