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 今思えば、あたしは昔から素直に頷けない女だった。


 初めて昭太に告白をされたのは10歳。近所の公園で遊んでいるときだった。


 「絶対、俺の方が固いし」
 「いやいや、あたしの方が……」


 泥を丸めてサラ砂をかけ、出来あがった団子を更に固くして……。

 当時、小学生だったあたしと昭太は2人で公園に行って、泥団子をどれだけ強化できるか競い合っていた。

 妹たちの作っているのを見て始めたことだったけど、これが思っていた以上に結構楽しくて。


 「なぁ、これで勝負しようぜ!」
 「勝負?」

 
 テンションの上がったあたしたちは団子相撲で勝負をすることになった。

 この遊びは高い場所から自分の団子を相手の団子に目掛けて落とす遊びで、あのときのあたしと昭太は競い合うようにジャングルジムに登った。


 「おーい!!まりっ!!俺から行くぞー!」


 あたしに叫ぶ昭太の大声。
 当時の昭太は腕白で。
 いつも何かにつけては叫んでいて。


 「うるさいよ。しょうた君……」


 そんな昭太に顔を顰めて注意をするのがあたしの役目だった。



 「まり!この勝負に俺が勝ったら俺と付き合え!」


 昭太は勝利の景品にあたしを指定してきた。

 きっと昭太なりの不器用な告白だったんだと思う。


 正直、凄く嬉しかった。あたしも昭太が好きだったから。でも、当時のあたしは素直に頷けなくて。


 「えー。やだよ」

 可愛げもなく断った。



 「いいから付き合え!」
 「やーだー」


 暫く言い合いを続け、結局彼の望み通りにすることにした。


 それは回りくどくて曖昧で。
 まるで、あたしたちの関係そのものみたいな告白で。


 勝負に拘らなくてもお互い好きなら付き合えば良かったのに。

 ジャングルジムから団子を投げるときに少しだけ後悔した。でも、後悔しても時は既に遅しで。


 「あぁっ!くっそー!」


 結局、勝負はあたしの勝ちだった。