白いシーツの上で彼があたしを抱き締める。

 見知った温もりがふわりとあたしを包んで、何だか少し切ない気持ちになった。


 「年月が経つのって早い。もう25歳だもんな」


 ぽつりと言葉を落とした彼に、あたしは「そうね」と相槌を打った。


 彼と知り合って25年。
 25年もの間、彼はずっとあたしの傍にいた。
 親友よりも両親よりも1番深くあたしのことを知り尽くしていると思う。



 いつも傍にいて、気づけばお互いがお互いを好きになって、彼氏と彼女の関係になって、付き合ってもう10年。 


 喧嘩したり笑いあったり……。彼とは付き合う前も付き合ってからも、数えきれないくらい沢山の思い出を共有している。


 楽しかった恋人生活。
 今日でそれも終わりなんだ……と思うと寂しくて、ちょっと泣きそうになった。

 まさにブルー。感傷的になっている。


 「真梨(まり)。俺、寝ちゃいそう」
 「いいよ。寝れば?」


 あたしは彼……昭太(しょうた)に腕枕をされながら小さく頷いた。


 昭太はあたしの頭を優しく撫でて、さらにギュッと強く抱き締めてくる。


 「うん。ゴメン……先に寝るわ。おやすみ」


 昭太は申し訳なさそうに謝ると、あたしの隣でそっと瞼を閉じた。


 昭太は申し訳なさそうにしていたけど、あたしからすると寝てくれた方が都合がいい。


 最後の時間をゆっくり堪能できるから。


 1人でじっくり考えて、彼が起きるまでに25年間あたしと共に歩んできたモノと別れる決心をつけたい。


 少し寂しいけど、こうなることは産まれる前から決まっていたから。

 だから潔くお別れだ。


 今日、あたしは別れを告げる。