「真兄酷い!」

 「ふざけ倒すお前が悪いんだろ」

 「そんなこと言って本当はあたしのことが好きだから触りたいだけなんじゃないの!?」


 なんちゃって。


 あり得ないけど聞いてみた。怯むかなと思って。

 あり得ないとか言われたら落ち込むけど。


 「……は?」


 真兄はあたしの冗談を真に受けたのか、瞬時にあたしから離れた。

 目が合い口を結んで目を逸らされる。


 「真兄……」

 「お前……。いつから妄想癖になったんだ?」

 「……は?妄想癖?」

 「俺がお前を好き?ないない!あり得ねーって」


 真兄の発言に目を見開くと、真兄は床を叩いてゲラゲラと笑い転げた。

 真兄にあっさり否定されて落ち込んでいた気分が、さらに奈落の底まで落ちこむ。


 両想いじゃないとは思っていたけど……。

 これはもう疑いようもなく脈なし。


 告白せずに失恋、みたいな?
 あーあ。さようなら。あたしの初恋。
 バイバイ、淡い恋心、元気でね。


 いや、どうせ失恋決定ならついでに告っちゃえばいいか。


 同じ失恋でも、その方がスッキリするし。