映像の消えたテレビ画面には、真兄が楽しそうに顔を歪ませて笑っている姿が映っている。


 指と首の関節をポキポキと鳴らし、ゆっくりとあたしに近付くその姿を見て堪らず苦笑い。

 見覚えのあるこのポージング。
 これはきっと、あれをされてしまうに違いない。



 「まさか……あれ?」
 「あぁ。そのまさか、だ」

 体をなるべく縮こませて尋ねたあたしに、真兄は低く呟きニヤリと笑う。

 その真兄の笑顔にあたし顔は引き攣った。


 「真兄お得意の四の字固め?」
 「そう。四の字固め」


 やっぱり。
 プロレス好きの真兄はあたしに苛立ったりすると昔から四の字固めを食らわせてくる。


 小学生の頃なんてそれで散々泣かされた。

 まさか頭を撫でただけで、こんな事態に陥ることになるとは……。


 楽しそうに口角上げて右足に触れた真兄。

 “真兄に全く女として見られていない”と自覚してドッと落ち込むあたし。


 技を掛けられるのはこの際どうだっていい。

 ただ、あのプロレスの技を平然と女のあたしに掛けるのが嫌なんだ。


 一応、年頃の女なんですけど?